「ギルちゃんもうちょっとそっち行って」
「はみ出るだろうが!」
「どんなポーズとったらええん?」
「三人ともカメラカメラ!」
とあるゲームセンターの一角。狭いプリクラ機の中で、四人が身体を押し付け合っていた。賑やかな声は雑多なゲーム音が入り乱れる店内でも快活に響き、近くを通る人は訝しげにたちの入ったプリクラ機を見つめる。当の四人はそんな注目を浴びてることなど露知らず、小さな枠に入り込もうと、おしくらまんじゅう状態。
一枚はギルベルトが腕しか写っていなかったり、一枚は喧嘩する二人をのけてとアントーニョのツーショットだったり、一枚はフランシスのドアップだったり、一枚は気を取り直して四人仲良くダブルピース。
「最後は三人で撮りなよ」
あと一枚という直前でがそういい残すと、鞄を手に外へ出ようとしたが―――
「えー男三人でプリクラとかいややあ!むっさいもん!」
「そうだよ華がなくなっちゃうじゃない」
「ここまできて何言ってんだよ」
三人に引き止められ、そのままされるがままに撮り終えた。
「……ギルベルトとアントーニョとフランシスのお馬鹿なスリーショットがみたかったのに」
「そんならヘン顔とかやればよかったなあ」
「また次回な」
「さ、ひとまず出ますよー」
語尾に☆マークでもつきそうなアナウンス音声に従って、連なってる落書き部屋に移動する。しばらく来ない間に加工のバリエーションが大幅に増えていた。プリクラの醍醐味はなんといっても、自由に写真を彩れることである。まずはとフランシスがペンを握り、いたずら書きを開始する。主に顔面に。
「ぷっ……くくく……どうよこれ」
「おい!俺の顔で遊ぶんじゃねえ!」
「私はアントーニョをおもっきり可愛くしたいと思いまーす!」
「ロヴィにもみせるさかい、完成度は高くでたのむで!」
「まかせてー」
わざと変な線を足して面白可笑しく描く。アントーニョにメイクを施すと、プリクラの補正が強いのも手伝って、昔のフランシスくらいに女々しくなった。「誰コレ」なレベルだ。
制限時間の半分を過ぎたあたりで交代。バトンタッチ。フランシスに好きなだけ遊ばれたギルベルトが、お返しと言わんばかりに書きなぐる。アントーニョも、「ほんな今度は俺がをかわいくする番やなー」と、はりきって画面に向かう。
「フランシスには……こうして、こうして、こうしてやる!」
「いやあああお兄さんの綺麗な顔に変なもの付け足さないで!」
「お互いさまだお互いさま」
「はそのまんまで十分かわええから、手ぇくわえる必要ないなあ」
「え……」
「ああ、そのトマトみたいに赤ぉなるとことかめっちゃかわいいわー」
「……は、はやくしないと、時間が、お、終わっちゃうよ!」
「おお、せやったな。はよしんと……」
「…………そこの二人、桃色の空気撒き散らかすのやめてくんない?」
「鈍感野郎にいっても分かんねえと思うぞ」
「は?なにがや」
「ほらみろ」
「?」
「……っ…三人とも会話はいいから……」
フランシスの茶化すような一言で、いっそう頬に熱を帯びたが、恥ずかしさを紛らわせて口を挟むが、しかし、プリクラ機の女声が落書き終了の合図を知らせ、言葉が途中で止まってしまった。
「……あ」
「……お」
「……え」
「……へ?」
その不意な第三者の介入に、四人がそれぞれ違ったひらがなを順に発したあと、機械から間もなく出来上がったプリクラが出てくる。放心を解いてフランシスが取り出し口から写真を取ると、同時にアントーニョが肩を落とした。
「……中途半端なまま終わってもうた……」
「でも結構いい出来じゃん」
「ど、どんな感じになった?」
「どれどれ俺様のは……」
一瞬変な空気が流れたものの、すぐに普段の調子に戻った。
四人でプリクラを均等に分け、手帳に挟む。帰ったら貼り付け作業だ。エリザやリヒテンシュタイン、台湾、セーシェル、ナターリヤ、ベルギーと撮ったものと一緒に並べるとしよう。それはそうと、
「三人はそれどこに貼るの?」
「決めてねえ」
「決めてない」
「決めてへん」
ピンクinカラフル
「男の子はやっぱりこんなのとは無縁だよね……」
「そんなことないよ!ちゃんに誘われれば俺はいつでもお供するよ!」
「おう、俺を誘うのも忘れんなよ」
「俺もついていくさかいになー。とならどこ行っても楽しいしー」
(アントーニョの天然っぷりと無自覚発言は心臓に悪い……)