「ありえない」
「まずねえよ」
「それはないわ」
「ええっ!?」
12月のイベントといえば、クリスマス。クリスマスといえば、サンタクロースが子供達にプレゼントを運んでくる他にも、日本では恋人同士で過ごすという傾向が強い。そんなにとっては当たりまえの"文化"をフランシスとギルベルトとアントーニョに聞かせたところ、三人全員が驚愕の表情を貼り付けての国の常識を一斉に否定した。
「『ええっ!?』ってお前、クリスマスを恋人同士で過ごすとか……ねーよ。どう考えてもねーよ。」
「バレンタインデーといいクリスマスといい、日本はぶっ飛んでるな」
「俺たちには想像もつかんでえ……」
「そこまで言うんだったら皆のとこのクリスマスはどういう感じなのか、教えてよ」
三人があまりにも口を揃えて言うので、だったら欧州のクリスマスはどうなんだと、がフランシス・ギルベルト・アントーニョに疑問を投げる。
「俺んちでは家族とか親戚の人たちで過ごすのが基本だ。んで、クリスマスの日の飯はアメリカの家みたいに豪華じゃねぇのがほとんどで、プレゼント持ってくるのもサンタクロースじゃなくてクリストキントっつー子供の天使だ。……今はサンタの方が目立ってるけど。あと、クリスマス当日は店も閉まって街がすっげー静かになる。なんてったってみんな家に篭もり始めるからな」
クリスマスはこうあるべきだ、とでも言いたげなジェスチャーを交えて自国のクリスマスの過ごし方を語ったギルベルトに続き、次はフランシスが自慢げに喋り始める。
「フランスでも家族や親戚と過ごすのが一般的だよ。ギルベルトのとことは反対で、俺んとこではクリスマスには一年で一番のとびきり豪華なご馳走をみんなで食べるんだ。もちろん、フォアグラは欠かせないさ。それと、シャンパンとワインも。食事しながら大人数でワイワイやるのが俺んちのクリスマスかな。昼間っからずっと飲み食いしてるねぇ」
自分の国を誇らしく思ってるフランシスは、若干気取った話し方をするものの、優しい口調での疑問に答えた。
そして待ってましたと言わんばかりに、アントーニョが声を張り上げて唇を動かす。
「俺んとこではクリスマスっちゅーたら宗教の関係もあって、一層大事な日でな。ギルとフランシスの家とおんなしように、家族と祝うのが普通や。「ベレン」っちゅう人形飾ったりもすんで!俺んとってはツリーよりも重要や。料理もクリスマスならではの豪華なもんぎょーさん作って楽しくやるわ。それからプレゼントやけど、三賢人がラクダに乗って来んねん!どや、日本とは全然ちゃうか?」
「うん……。同じヨーロッパ圏でもそんなに大きな違いがあるんだ……」
「ふうん…」とが感心の息を零す。すると、「今度はのばんね。もっと日本のクリスマスについて詳しく教えてよ」とフランシスが言い出し、ギルベルトとアントーニョも興味津々の目つきでを凝視する。「え、えーと……」三人とは根本的な部分からクリスマスの文化が違うは、発言に躊躇いながらもありのままの日本のクリスマス文化を思い切って暴露する。
「さっきも言った通り、日本では家族とうちで過ごすっていう文化は根強くなくて、恋人がいたりしたら二人で過ごすし……。一人身のひとにはちょっと辛いイベントかな?なんか、クリスマスに恋人がいない=負け組みみたいなレッテルが貼られてる感じ。今の三人の話聞いてたら、フランスやドイツやスペインではきっとそんなことはないんだろうね。…………多分、イブの日にラブホテルが満員になるのって日本くらいだと思う。よ、よ、よく分かんないけどごめんなさい!」
それをきいた三人は、まるで未知の生物でも目の当たりにしたかのように目を丸めて、顔を歪めた。全員なんとも言えず、「お、おう……」「そう……なんだ」「へー……」と各々言葉を濁らせている。―――つまり一言でいうと、引いてる状態である。
「なかなか……ねえ、個性的で……。世界は広いんだからこんなクリスマスがあってもおかしくないよね!(菊……やっぱりお前はお前だったな……)」
「だ…な!色々常識覆されたけど、日本は日本でいいと思うぜ?(やべどうしよう……菊のやつにこれ直接確認する勇気がない……)」
「……………は?どういうことなん?え?」
「……ッ」
これが日本のクリスマスなんです!
こう見るとやっぱり日本って変わってる