「へえ……結構もらったんだ、三人とも」
意外そうな顔をするの前で、フランシス・ギルベルト・アントーニョの三人は、誇らしげに笑顔を輝かせる。
「まあ、俺ぐらいになると、アレだな。やっぱ自然に女の視線を奪っちまうっつーか」
「俺のフェロモンに誘われた可憐な蝶たちが、日頃の想いを伝えにこの日に集まってきたっていうか」
「どないしよーこんなにようさんもろてしもたわーどないしよー」
傍から見ればかなりうっとうしい感じの喋り方で、己のモテアピールを自慢する悪友スリー。三人とも大事そうに腕にチョコを抱えて、鼻高々に語り続ける。
(……?)
そんなフランシスたちの腕の中にあるチョコレートを見て、がある違和感に気がつく。フランシス・ギルベルト・アントーニョ。それぞれ五個以上と結構もらってはいるのだが―――その包みが、どれもとても酷似しているということに。いや、酷似というレベルではなく、三人が持っているチョコの包み紙は、一つ一つがどれも同じだったのだ。例えば、フランシスが持っている、リボン柄のピンク色のラッピングの物は、ギルベルトもアントーニョも持っていたり、と。つまりこれは、あれだ。三人がもらったのは、
「それ……クラスの女子達が男子全員に配布してたやつじゃないの?」
五つあるのは、きっと「クラスの男子皆にあげよう」と思ってつくって来た奇特な女子が五人いたからだろう。これで違和感が拭えた。
「……」
「……」
「……」
「……えーと、そうだよね?」
もしかして私、すごい空気読めないこと言っっちゃった……?と、言ってから後悔する。四人の空間に重たい沈黙が横たわる。数秒してから一番先に声を発したのはアントーニョで、
「、そこは突っ込んだらあかんやろ……」
と、普段全く空気が読めない立場にいる彼が、突っ込みに突っ込みを入れた瞬間であった。
「……そうだよ。コレみんなクラスの女の子たちが全員に配ってたやつだよ」
「少しくらい夢見させろ!意地張らせろ!」
「ご…ごめん!ホント!」
謝るに対し、「いいよ」「ええよ」「……ったく」と返し、すっかりいつもの調子に戻ったフランシスとギルベルトとアントーニョ。一度はバレンタインにチョコを抱えきれないくらいにもらって周りに見せびらかしたいものである。現実にそんなことができるモテ男がいるならば、ぜひお目にかかってみたい。……さすがにこれはフィクションじみていると分かっていても。
一度でいいから見てみたい、下駄箱から溢れるチョコレート
「それだけあるならさすがに」
「食べきれへんと思うから」
「俺が食べてやってもいいぜ!」
「私からも後であげるから、それで我慢して頂戴!」