「「暑い」」
「なら離れればいいじゃない」
夏の風物詩といえる蝉の鳴き声が、外で大合唱となっている。そんな季節。
クーラーをつけた快適な部屋に居るにも関わらず、の体からは汗が伝っていた。調節温度は高すぎず低すぎずで、丁度いいはずだ。それでも汗で服が濡れていくのを感じるのは、多分、いや間違いなく横に居る臨也と静雄のせいだろう。この暑い日にまでベタベタとに抱きついていく臨也に対抗意識を燃やして、静雄までもがくっついてきたので、二人に挟まれているにとってはクーラーなんて効いてないも同然だった。
「嫌」
「ヤダ」
「あのーお二人さん、一番暑いのは誰だか分かってます?」
「俺のへの愛は夏の太陽よりも熱いんだから」
「うざい」
臨也の甘ったるい軽口さえも、聞いてるだけで暑苦しくなってくる。
冬には体を寄せ合うと温かいのだが、夏ともなると話は別だ。今にしろ、何をしても何を言っても必ず「暑い」という言葉が自然と口から出てきてしまう。それでは余計に夏バテする一方なので、「夏っていえば何を思い浮かべる?」と、が臨也と静雄に訊く。
「夏ね……」
「夏、か……」
海、風鈴、蝉、かき氷、スイカ、団扇……など、「夏」という単語から思い浮かべられるのはたくさんあるはずなのに、二人はしばし時間を置いて考えこんだ。最初に口を開いたのは臨也で、それに静雄が続いて「夏」を彷彿させるものを挙げていく。
「の生足」
「の水着姿」
「の汗で滲んで透けて見える下着」
「の大胆な肌露出」
「の」
「もういい訊いて後悔してる」
定番の意見が出てくるかと思いきや、を中心にした臨也と静雄の「夏」をきいて、は呆れて溜息を漏らす。
「変態」
放った罵りの言葉に反論もしない二人に、さらにがひいたのは言うまでもない。
「臨也はともかく静雄がそういう面で堂々としてるの久しぶりにみた……」
「そうか?」
「なんだシズちゃんも変態だったの」
「黙れノミ蟲三度死ね」
「"も"ってことは自覚あるんだね臨也。……私の周りには普通な人は………あ、いた京平だ」
「ドタチンは真面目人間すぎるよ」
「欲が無いな欲が」
「逆に新羅はセルティに対して遠慮を知らないしねぇ」
グダグダとした会話をし、汗が額から首に流れ落ちながらも、ずっと二人にひっつかれて両手が自由に使えないのでクーラーの温度を下げるのは諦めた。それに今でもかなり冷房は効いてる……はずだ。
「こんな日は海とかプールに行きたいよねー……」
「そうだねの水着姿が拝めるからね」
「夏はそのためにあるな」
「…………前々から思ってたんだけどさ、臨也と静雄って本当は仲良いんじゃないの?」
もちろん即行で否定されました