話をしようか。
話題はもちろんのことさ。
僕も彼女とは出会ったばかりで、まだ詳しくは知らない。と、いっても初めて会話を交わしたあの日から、すでに3ヶ月が経ってるわけだ。
友達と言える程の関係ではあるだろう。休み時間を一緒に過ごしたり、一緒に帰ったりはしてるし、普通に仲は良いと思うよ。
どうやら僕とは生活環境が似ているらしく、両親とは別々に暮らしてるらしい。それもあってか気が合う部分も多くて、自然と友達になっていた。
よく、「友達になろう」と誘う形で関係を作る場合があるけど、友達ってそういうものかな?僕は違うと思うな。
友達っていうのは、気づいたら傍に居る存在なんだよ。普段意識したりはしないけど、改めて振り返ってみたら、いつだって、どこだって、隣に居てくれて。
―――まあ、これは僕の個人的な意見で、全てがそうとは限らない。当たり前さ。「友達になろう」この一言で友情が芽生えるパターンだってあるだろうよ。
おっと、話が逸れたね。ごめんごめん。
けど、今のがセルティ関連の話だったらあれくらいじゃ済まないよ。僕が一度セルティのことを口にしたら、一夜を明かすまでは喋り倒すから。
……脳がセルティモードに切り替わる前に、に視点を戻そう。
彼女は一見どこにでもいそうな普通の女の子だ。地味でもなく、派手でもなく。
それなりに可愛いけど、町を歩けば10人中10人が振り向くだとか、異性を一瞬で惚れさせてしまうだとか、学校内では一番可愛いとか、っていう女子が憧れる少女漫画設定はない。ごくごく一般的な、でも顔のレベルは平均より上の、普通の女子高生。
ただ、変わってるといえば、彼女を取り巻く環境だね。
この来神高校ではもはや知らない人なんていない。
平和島静雄と折原臨也。
入学式早々から騒ぎを起こして、その日から立派な有名人になってる二人。
まずは静雄。
下手をすればプロのボクサーよりも強いパンチを繰り出せちゃう奴だよ。
言葉で説明するより実際に見た方が、彼の怪力がどんなに現実離れしてるかが解るだろう。生憎今静雄は近くにいない。
好きで喧嘩してるわけではないみたいだし、静雄自身は、名前通り平和且つ静かな日々を望んでるらしいけど……まあ、臨也がいる限り無理な話だね。二人が喧嘩しない日はないんだから。
次に、臨也だ。
人間観察とか訳の分からないことをしている奴。
そういう趣味を持ってるのも一つだけど、ナイフを常に所持してるなんてもう、中二病以外の何物でもない。残念ながら今のところこの病気は治りそうにないよ。
俺の右手には力が眠ってる……とか、どこぞの組織のボスで、命を狙われてる……とか言われるよりはマシでも。
けど、上っ面だけじゃないのが臨也だ。っていうのは、本当に臨也が人を観る目が長けてるからで。まるで人の頭の中に監視カメラでも仕掛けてるんじゃないかってほど、臨也は簡単に考えてることを、思考を、当ててしまうんだ。
とにかく変な奴だよ。
そんな静雄と臨也と付き合いをもってるのがだ。
静雄とは入学式の事件後、仲良くなったらしく、この二人は見ていてなんだかほんわかする。やり取りとかがね。
臨也とは……臨也の一方通行だね。全体的に。
最初は人間観察とかなんとか言ってにも他の女子達と変わらない態度で接してたくせに、今となってはベタベタひっついていっている。おまけにデレデレ。どうしてこうなった。いつ、どうして、どんなことがあってこうなった。臨也の中での存在はどう変化したの?
自問自答しても、答えなんて帰ってこない。
機会があれば本人に聞いてみよう。機会があれば。
一応ここまで喋ってはみたものの、まだまだ知らない事実だらけだ。
それはきっとこれから、時間を重ねて知っていくんだろう。
スタートライン
始まったばかりの僕らの青春
……ん?なんで僕がを下の名前で呼び捨てにしてるのかって?
そりゃ、臨也と静雄はを名前で呼んでるのに、僕だけ苗字なんてなんだか蚊帳の外にいる感じがするだろう?